最終更新:2026年6月
結論:インバウンド価格(外国人と日本人で価格を分ける二重価格)は、合理的な理由を明示すれば違法ではありません。本記事では二重価格の正しい設定方法・違法にならない条件・成功事例を解説します。
「インバウンド価格を設定したいが、どう決めればいい?」「外国人旅行者向けに値段を上げても問題ないの?」——インバウンド需要が拡大する中、価格設定が観光・飲食・宿泊業の収益を大きく左右する時代になりました。本記事ではインバウンド価格の基本から二重価格・適正価格設定の実践方法まで徹底解説します。
インバウンド価格とは?基本の考え方
インバウンド価格とは、訪日外国人旅行者を主な対象として設定する価格体系のことです。広義では以下の3つのアプローチを含みます。
- 均一価格:日本人・外国人同一の価格(最もシンプル)
- 外国人向け特別プラン:付加価値を加えた高単価プランを外国人向けに設定
- 二重価格:日本人価格と外国人価格を明示的に分けて設定
重要なのは「インバウンド価格=高く売りつける」ではなく、外国人旅行者のニーズに合ったサービスを適切な価格で提供することです。
インバウンド二重価格とは?法的根拠を確認
インバウンド二重価格とは、日本人と外国人旅行者に対して異なる価格を設定することです。海外では「外国人料金」「観光客料金」として広く普及しており、インド・タイ・エジプトなど多くの国で一般的な慣行です。
日本での二重価格は違法ではありません。ただし以下の点に注意が必要です。
- 価格を明示する(「Tourist Price / 観光客向け料金」として店頭・Webで明確に提示)
- 価格差の理由を説明できる(英語対応・ガイド付き・特別サービスなど付加価値を明確に)
- 入場拒否・サービス差別はしない(価格だけを変える)
海外・国内のインバウンド価格事例
海外の事例
- インド:タージマハルの入場料が外国人は約10倍以上
- タイ:国立公園の入場料が外国人向けに設定
- カンボジア:アンコールワットの入場料は外国人専用料金
国内の導入事例
- 京都・東京:一部の旅館・料亭で外国人向け特別プランを設定
- 観光地の飲食店:英語メニューと日本語メニューで価格差を設けるケース
- 体験施設:外国人向け体験プランを高単価で提供する事例
インバウンド価格の設定方法|適正価格の決め方
ステップ1:外国人客の購買力・相場を調査する
訪日外国人の平均消費額は1人あたり旅行中20〜30万円程度。出身国別にも購買力が異なるため、主要顧客の国籍と相場価格を把握することが重要です。
ステップ2:付加価値を明確にする
価格差をつけるには付加価値で納得させる必要があります。例:多言語対応スタッフ・英語ガイド・翻訳メニュー・専用コンシェルジュ
ステップ3:競合価格と比較する
同エリアの類似施設のインバウンド価格を確認し、適切な価格帯を見極めることが重要です。高すぎると敬遠され、安すぎると付加価値が伝わりません。
インバウンド価格設定のメリット
客単価・売上の向上
外国人旅行者は一般的に日本人より購買力が高く、適切に価格設定することで客単価・売上の大幅アップが期待できます。
地域の持続可能な観光への貢献
オーバーツーリズム問題の解決策として、高単価・少人数での外国人観光客対応が有効です。
炎上リスク対策|インバウンド価格で失敗しないために
- 価格表示は日英両語で明記する
- SNSでの発信前にコンテキストを明確にする
- 「差別」ではなく「付加価値の対価」として説明できる設計にする
インバウンド価格を導入するときの費用とやること
二重価格やインバウンド向けプランを入れるとき、実際にコストがかかるのは「価格を決める作業」ではなく、価格差を説明できる状態を作る作業です。最低限やることは次の3つです。
| やること | 目的 | 費用のかかり方 |
|---|---|---|
| 相場・競合価格の調査 | 同エリアの類似施設がいくらで売れているかを把握し、上限と下限を決める | 自社で調べれば費用ゼロ。調査を外注する場合は数万円〜 |
| 多言語の価格表示(店頭・Web・メニュー) | 「事前に明示した」という事実を残し、会計時のトラブルを防ぐ | 翻訳・印刷・サイト改修の実費 |
| スタッフが説明できる状態にする | 「なぜ価格が違うのか」を現場が同じ言葉で答えられるようにする | 説明用の1枚メモを作るだけでも成立する |
逆に、いきなり高機能なCRMや価格最適化ツールを入れる必要はありません。価格表の多言語化と説明トークの統一が先で、ツールは客数が増えて手作業が回らなくなってから検討すれば十分です。
【一次情報】値上げではなく「体験化」で単価は上がる。渋谷で5〜6万円の商品を売って分かった価格設計
ここからは、当社(株式会社ENHANCE IT)の代表が自ら運営している訪日外国人向けのJDM(日本車)ツアー・レンタカー・写真ツアーで、実際に価格を設計し、決済まで通して得た一次情報です。一般論ではなく、自社1社の運用で実際に起きたことだけを記載します。
- 販売価格帯:渋谷発の体験で1件5〜6万円が実際に売れている
- 6万円の予約でOTA手数料を引いた後の入金:約4.5万円
- 直接原価:燃料は利用者負担/清掃ほぼ0円/対応にかかる人件費約1,500円
- 1予約あたりの手残り:概算3万円前後
- チップ:3時間の商品で5,000〜20,000円を受け取ることがある
- デポジット:10〜25万円を事前にネット決済で確保
※当社1社の運用で実際に発生した数値です。同等の成果を保証するものではありません。
そもそも「同じ商品を外国人にだけ高く売る」設計にしていない
二重価格が炎上するのは、同じ商品に2つの値段がついているからです。国内客が5,000円で買えるものを外国人が15,000円で買わされていれば、理由を説明しても納得は得にくくなります。
当社が実際に取っている方法は、値付けを変えることではなく商品そのものを外国人向けに設計してしまうことです。日本車に乗って首都高や湾岸を走る、撮影がついてくる、英語で案内される——この形にすると、そもそも国内価格との比較対象が存在しません。比較されないので、上乗せ分を正当化する説明も要らなくなります。
結果として、渋谷発の体験で1件5〜6万円という価格が成立しています。国内向けの同種サービスを5〜6万円で売るのは簡単ではありませんが、「訪日中の限られた日程で、その国では絶対にできない体験をする」という文脈では、この価格で実際に決済が通っています。
手数料と原価を引いた後にいくら残るのかを、先に決めておく
価格を決めるとき、表示価格だけを見て「6万円なら高単価だ」と考えると危険です。当社の実数はこうなります。
| 項目 | 金額(1予約あたり) |
|---|---|
| 表示価格 | 60,000円 |
| OTA手数料を引いた後の入金 | 約45,000円 |
| 燃料 | 0円(利用者負担) |
| 清掃 | ほぼ0円 |
| 対応にかかる人件費 | 約1,500円 |
| 手残り(概算) | 約30,000円前後 |
表示価格の約25%が手数料で消えるため、外部プラットフォームに載せる商品は、その分を織り込んだ価格でなければ利益が残りません。「外国人価格だから高くしている」のではなく、手数料構造の分だけ最初から上に置いているという説明のほうが、実態にも合っていますし現場も説明しやすくなります。
チップは「取りにいく」ものではなく、総額を明示した結果として発生する
当社の商品では、3時間の体験に対して5,000〜20,000円のチップを受け取ることがあります。ただし、これは請求しているものではありません。
やっているのは逆で、料金にチップ相当を含めた総額を最初に明示することです。日本にはチップ文化がないため、明示しないと利用者側が「払うべきか、いくら払うべきか」を最後まで気にすることになります。総額を先に示して「これ以上はかかりません」と伝えると、その不安が消えます。そのうえで、満足した利用者が自発的に上乗せする、という順番です。
キャッシュレス限定にしたら、ドタキャンが消えた
価格設計と同じくらい効いたのが決済方法です。当社はクレジットカードなどのキャッシュレス決済のみに限定しています。現地現金払いをやめた結果、ドタキャンがほぼ発生しなくなりました。
さらに、レンタカー商品では10〜25万円のデポジットを事前にネット決済で確保しています。決済が先に通っている予約は、利用者側にも「行かない理由」がなくなります。
参考までに、無料キャンセルを許容している商品では10件中2〜3件がキャンセル、つまり7〜8割が実際に利用される、という数字が出ています(母数は小さいため参考値です)。価格を上げるより先に、入ってきた予約を落とさない設計をしたほうが、実収は素直に伸びます。
単価より先に効いたのは「予約できる時間帯を増やしたこと」だった
最後に、価格の話をしているこの記事であえて書いておきたいのが、当社で一番効いたのは商品の差別化でも値付けでもなく、予約できる時間帯を増やしたことだったという事実です。
もともと夜のみで催行していた商品を昼にも開放したところ、昼の予約が発生しました。開始時刻を1時間ずらすだけでも予約数は動きます。「売れないのは価格が高いからだ」と考えて値下げする前に、そもそも相手が予約できる時間に枠が開いているかを確認するほうが先です。値下げは一度やると戻せませんが、枠を開けるのは無料で試せます。
インバウンド価格・二重価格のよくある質問
インバウンド価格とは何ですか?
訪日外国人旅行者を主な対象として設定する価格体系のことです。日本人と同じ均一価格にする、外国人向けに付加価値をつけた高単価プランを用意する、日本人価格と外国人価格を分ける(二重価格)の3つのアプローチがあり、実務では「高く売る」ことではなく「外国人客が必要とするサービスを適正価格で提供する」という設計が前提になります。
外国人向けの二重価格は違法ですか?
日本の法律で一律に禁止されているわけではなく、条件を満たせば違法ではありません。ただし、価格を店頭とWebの両方で明示すること、価格差の理由(多言語対応・ガイド・翻訳メニューなどの付加価値)を説明できること、入店拒否やサービスの質そのものに差をつけないこと、の3点を満たす必要があります。個別の事案については景品表示法・消費者契約法の観点から専門家に確認してください。
二重価格が「違法」と言われてしまうのはどんなケースですか?
価格を事前に表示せず会計時に外国人だけ高く請求する、日本語メニューと英語メニューで理由なく金額が違う、価格差の説明ができない、といったケースです。価格差そのものより「表示していない」「理由が説明できない」ことがトラブルと炎上の原因になります。
二重価格のメリットは何ですか?
客単価と売上を上げられること、そして混雑を価格でコントロールできることの2点です。訪日外国人は日本人より購買力が高い層が含まれるため、多言語対応や専用サービスを付けた高単価プランは受け入れられやすく、オーバーツーリズム対策としても機能します。
二重価格のデメリット・リスクは何ですか?
SNSでの炎上と口コミ評価の低下が最大のリスクです。「差別された」と受け取られると、Googleマップやレビューサイトに低評価が残り、価格を戻しても回復に時間がかかります。価格差は必ず付加価値とセットで設計してください。
海外では外国人料金は一般的ですか?
一般的です。インドのタージマハル、カンボジアのアンコールワット、タイの国立公園など、観光施設の入場料を国内居住者と外国人で分けている国は少なくありません。日本より価格差が大きい例も多くあります。
外国人料金はいくら上乗せするのが適正ですか?
一律の目安はなく、同エリアの類似施設の価格と、付加価値のコスト(多言語スタッフ・翻訳・専用対応にかかる人件費)から逆算して決めます。高すぎると敬遠され、安すぎると付加価値が伝わらないため、競合調査とテスト販売で刻むのが実務的です。
💬 「何から始めればいい?」そんなご相談も大歓迎です。
LINEでは担当スタッフが直接お返事します。お気軽にメッセージください。
外国人向けの体験商品は、実際いくらで売れますか?
当社(株式会社ENHANCE IT)が渋谷発で運営している訪日外国人向けの体験商品では、1件5〜6万円の価格帯が実際に売れています。国内向けの同種サービスでは成立しにくい価格ですが、「その国では体験できない内容」に商品を作り替えると、比較対象が存在しなくなるため通ります。※当社1社の実績であり、同等の成果を保証するものではありません。
手数料や原価を引くと、いくら手元に残りますか?
当社の実数では、6万円の予約でOTA手数料を引いた後の入金が約4.5万円、そこから燃料(利用者負担で0円)・清掃(ほぼ0円)・対応人件費(約1,500円)を引いて、1予約あたり概算3万円前後が手残りです。表示価格の約25%が手数料で消えるため、外部プラットフォームに載せる商品はその分を織り込んだ価格設定が前提になります。
予約のドタキャンはどう防いでいますか?
当社はキャッシュレス決済のみに限定しており、現地現金払いをやめた結果ドタキャンがほぼ発生しなくなりました。レンタカー商品では10〜25万円のデポジットを事前にネット決済で確保しています。なお無料キャンセルを許容している商品では10件中2〜3件がキャンセル(=7〜8割が実利用)という数字が出ています(母数が小さいため参考値です)。
まとめ
インバウンド価格設定は、正しく設計すれば収益向上と持続可能な観光の両立が可能です。重要なのは透明性と付加価値の明確化。外国人旅行者にとっても「納得感のある価格」を実現することが長期的な成功につながります。
💬 「何から始めればいい?」そんなご相談も大歓迎です。
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